『さよなら、インタフェース 脱「画面」の思考法』を読んだ

 

さよなら、インタフェース -脱「画面」の思考法

さよなら、インタフェース -脱「画面」の思考法

  • 作者: ゴールデン・クリシュナ,武舎るみ,武舎広幸
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2015/09/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 『さよなら、インタフェース 脱「画面」の思考法』という本を読みました。著者のゴールデン・クリシュナという人はいわゆるUXデザイナーで、「No UI」という考え方をモットーにしてる人らしいです。いちおうUIとかをメシの種にしている人間なので、本屋で見かけて気になって買ってみました。まさにアメリカンエッセイという感じの、話し言葉で書かれています。

書いてあること

IoTだなんだと言って、いろんなことがスマホアプリを通じてできるようになってきた一方、画面(スクリーン)ありきで物事を捉えすぎていないか、というのが大元の考え方のようです。
スマホアプリで車の鍵を開け閉めできるのは便利なことか?自分が本当にしたいのはただ車のドアを開けることなのに、なぜそのためにポケットからスマホを取り出してアプリを起動しなくてはならないのか?たとえそのアプリがどんな優れたUIで作られているとしても、そもそもそんなインターフェースが存在していること自体が、自然なユーザーの動きに反しているのではないのか?
こういった、最近のUXデザインといわれるものに一言申す本です。

ぼくは言わせてもらいたいーー「ポケットからスマホを出すのをやめろ」。

ゴールデン・クリシュナ『さよなら、インタフェース 脱「画面」の思考法』 BNN p.126

「No UIであること」とそのための3つの方針

本書ではたびたび「No UI」という言葉が出てきます。UI(ユーザーインターフェース)がある時点で、ユーザーに無用な操作を求めていることに他ならない。本当は「操作する」必要がない、つまりUIを持たないツールこそがつくられるべきである、という考え方です。そんな「No UI」をデザインするために3つの方針が書かれています。

①いつもの手順を把握して、それを活かす

たとえばドアノブに手をかけると本人を認識して自動で開錠してくれるドア。これならわざわざスマホをかざして開錠するドアなんかより、手間は少ないし鍵をなくす心配もない。ただ本来の手順である「ドアノブに手をかける」→「ドアを開ける」を活かして、そのなかで物事が完結するようにしています。

②ユーザーインプットよりマシーンインプットを

ユーザーに何かを入力させるのは、ただ手間であるだけでなく間違いも起きやすいし、情報量も少ない。そこでユーザーの行動や周りの環境に合わせて、勝手にコンピュータが情報を取得するようにするようにする。
たとえばPetzlという会社のセンサー付きヘッドランプは、前にあるものの明るさと距離を感知して発光量を自動調節する。登山中などにそれを使うことで、自分で発光量を調整する手間が省けるし、電池切れという最悪の自体を避けやすくなる。

③ひとりひとりに合わせる

個人の情報を継続してトラッキングし、それがもたらす結果に対して事前に対応できるようにする。ある病院患者の様子をベッド下のセンサで常にモニターしておき、何か異変を起こす兆候が見られた時には、それに対処すべき人間に対して警告を発する。トイレに行きたがっている兆候がでたら看護師を呼ぶし、症状に異変が見られたら医師を呼ぶ。

こういったことを達成するには色々課題もある。プライバシーとか、不具合とか、デジタルに自分の情報を置きたくない人たちに受け入れられるかどうかとか。だけど、これらを乗り越えて「No UI」が普通の世の中を目指していくことが大事だ、というのがこの本で述べられている主張です。

感想

おおむね「まあ、わかる」という感じでした。
ぼく自身仕事で「まず画面」の設計を行うことがほとんどなんですが、ぶっちゃけ個人的には、がっつり凝ったUIが必要なアプリとかWebって、そもそもユーザーはそんなの求めてない、という気がしている。企業側の都合でつけられている場合がある。

確かになんでもスマホの画面ですませるよりも、そもそも画面を触る必要をなくしてしまう方が革命的だな、と思ったりもする。スマホに取り付けた機器にクレジットカードを通せばその場で決済ができるサービスなんかより、商品を持って外に出ただけで決済が済んでる仕組みの方が、よっぽどいろんな手間が省けるよな、とか。これができれば商業建築の設計ががらっと変わったりすると思う。(Beacon使えばできるのでは?と思ったりもするけどそんな話は聞いたことがない)

他にもNo UIにしてほしいと思う例として、AppleWatchにMac IDというアプリを入れている。AppleWatchをタップするだけで自分のMacのロックを解除することができる、というアプリなんだけど、ちゃんと使ったことない。だってAppleWatchをタップするのとふつうにMacにパスワード打ち込むのと、そんなに手間が変わらないから。どうせならAppleWatchを腕につけた時点で本人認証して、その状態でMacの近くにいたらパスワード入力が不要になるとかしてほしい。(Apple Watchを腕につけるだけで本人認証って難しいのかなあ)

いまさら、って感じのことをダラダラと述べている部分もあるけれど、空気を読まずにこういうことを繰り返し主張する人がいないと、世の中どんどん複雑になっていってしまうので、大事なことを言っている本であると思います。