「顧客志向のサービス開発・経営」HCD-Net サービス品質WGのセミナーに参加してきた

もうひと月以上まえになりますが、人間中心設計機構(HCD-Net)主催のセミナーを社命を受けて聴講してきたので、その内容をメモがてら、感じたことを書きます。
あんまりビジネスに特化した話は興味ないのですが、まあ備忘録です。

概要

このセミナーは「UXの品質を定量的に捉える」というテーマを掲げており、それによってUX(User Experience)というのをいかにビジネスに活用していくか、という内容です。今回の講師は「ユーザ中心」を掲げたコンサルティングを行っている株式会社ビービットの代表、遠藤直紀さんで、講演のタイトルは「顧客ロイヤリティ経営の具体的方策と成功事例」でした。
イベントについて

内容

内容としては、「単に利益を追求するのではなく、顧客に自社のファンとなってもらうことが必要である。そのための顧客ロイヤリティ指標を定義して、それを向上させていくための要因を特定してPDCAを回していくことが重要。そうして顧客ロイヤリティを高めていけば、きちんとビジネスとしても成功していく」というのが主な趣旨でした。
そのためには、顧客ロイヤリティ指標にどのようなものがあるか、それとビジネス指標にどのような相関を持っているかをきちんと把握しなければならない、ということで、その具体的な内容をセミナーでお話しされていました。(よくあるのはNPS)

利益には「よい利益」と「わるい利益」がある。

おそらく、今回の話の根本となる思想は『利益には「よい利益」と「わるい利益」がある』という所なのだと思います。講師の遠藤さんはそれぞれをざっくり以下のように説明していました。

よい利益
顧客がその商品に満足し、自ら進んで利用してくれることで得られる利益。
わるい利益
顧客はその商品を利用しているものの、それはその商品を気に入っているからではなく、「他に選択肢が無い」「乗り換えるのがめんどくさい」などの惰性で利用していることで得られる利益。

よい利益はそのままです。「このブランドが大好きだ!」と思ってその洋服を買ったりする、そうした利益。そのような顧客はロイヤルカスタマーと呼ばれ、他の人に商品を進めてくれたりします。
わるい利益の典型例は携帯キャリアの定額サービスです。「●ビデオ」とか。このサービスは携帯電話を新しくしたときに加入すると初期費用が割引になる代わりに、次の月から数百円程度の月額が課金されていくものです。ところが遠藤さんによると、こうしたサービスで支払われている月額のうち、約半数は「解約し忘れ」なのだと言います。つまりそのサービスを望んで利用してお金を払っている訳ではなく、単にお金を払い続けていることに気づいていない、もしくは解約するのがめんどくさいからそのままにしているということです。それって企業として健全ですか?というのが遠藤さんの持論。まったくもってその通りだと思います。(ちなみに他社にその実態がバレた場合、当然ながら悪い部分を改善したサービスを出されて客を取られる可能性があります。さらに解約代行なんてすればちょろいものです)

「よい利益」を追求すること

「顧客ロイヤリティ経営」に重要なのは、この「よい利益」を追求することだと遠藤さんは言います。
きちんとお客さんに気持ちよくお金を払ってもらうために、NPSなどの顧客ロイヤリティ指標をきちんと掲げ、その向上に向かって組織一丸になる必要がある。そのためには経営者からある程度はトップダウンで組織を変えていく必要があるとのことです。あんまり組織論はよくわからないのですが、当然の話だと思います。
ちなみにいわゆるUXというのは、その顧客ロイヤリティ指標を掲げるところから、その向上のための試作を行うところまでの文脈を指すのだと思います。

話を聞いてみて

「ごもっともな話だ」というのがざっくりした印象でした。ただ、これまで「確かにその通りだけど、現実そうはいかないよね。社内での評価もあるし」と暗黙のうちにスルーしてきたところに、改めて目を向けませんか、という話なのだと思います。
エージェンシーという会社に勤めている都合上、わりと大企業の人の話を聞いたりすることが多いのですが、やはり各部署によってミッションや貢献しなくてはならない指標が異なるため、皆その数字を落とさないようにすることにめが行きがちです。(やはり営業の部署の人なんかは新規顧客の獲得数をあげなければいけないでしょうから、適当なこと言ってでもとりあえず新規加入させなきゃいけないわけです。それが実際そのサービスを使いはじめた後のお客さんの満足に繋がっているかはどうでもいいわけです)
そこで全社統一の顧客ロイヤリティ指標を定めることで、社内の人間の意識の違いを無くしていく、社内評価システムのあり方がかなりの企業で大きな過大になるのでは、と漠然と感じた会でございました。